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【養生】陰陽で考える食養生<バランスを取ることが大切>

はじめに

人は生きていくために、必ず食事を摂取しています。我々の体を構成している骨や筋肉、器官などは食事からの栄養が無ければ継続して機能することはなく、歩いたり話したりすることも出来ません。人類が誕生してから現在まで、この考え方は変わっていません。

 

人の体を作っている食事

毎日の食事が我々の体を作っているということは、食事の内容によって体に対する影響はとても大きなものであると考えることが出来ます。食事の偏りは栄養の偏りとなり、それは健康を維持することへの障害となりかねません。逆に考えると、食事の内容を正すことが出来れば、健康を維持することも可能になるということです。

中医学における食事指導を「食養生」と呼びますが、食事の内容を見直すことで健康を維持すると考えます。自分自身の体質や体調にあった食事を摂ることが健康への近道です。中医学では陰陽という考え方があり、その考え方に沿った食養生というものがあります。今回は陰陽に関連した食養生の内容です。

陰陽の基本的な考え方

陰陽とは、世界のすべてを「陰」と「陽」に分けてしまう考え方です。陰陽として分けられているペアは、どれも「相反する性質」となっていて、相手がいなければ自分もいないと考えます。陰と陽はどちらも欠けてはならず両者が共存すること、それは「バランスが保たれていること」に繋がっていきます。また、陰陽という分類は絶対的に固定されたものではなく、あくまで相対的な関係となります。

この陰と陽の関係を食材や食事に当てはめて考えることが「陰陽で考える食養生」の基本的な考え方となります。必ず合致するわけではありませんが、陽性のものは温める作用があり、陰性のものは冷やす作用があると考えます。味や色、環境など様々なもので陰陽が分けられます。

◎土地の陰陽

北方は気温が低く、寒さを感じるため「陰」となり、南方はその反対なので「陽」と考えます。北方に住んでいる人たちは寒さをしのぐため、体が温まるように温性(陽性)のものを食べることが多くなります。一方、南方に住んでいる人たちは暑さをしのぐため、体が冷えるように冷性(陰性)のものを食べることが多くなります。北方で生産されるものは陽性であり、南方で生産されるものは陰性のものが多くなります。環境と食事には強い関連があるわけです。

◎味による陰陽

土地の陰陽とも繋がっていますが、北方に住んでいる人たちは塩分を多く摂取する傾向があります。塩分が体温を維持することを知っていたからです。つまり、鹹(しおからい)は陽性として区別されます。また、南方に位置するインドなどに住んでいる人たちは香辛料を多く摂取する傾向があります。香辛料は発汗させることで皮膚温を下げるため、辛いものは陰性として区別されます。味について陽性の強い順から並べていくと「苦>鹹(塩)>甘>酸>辛」となります。

◎色による陰陽

色のイメージがそのまま陰陽に分かれています。赤や黄色は温かみのある色のイメージであるため陽性と考え、青や紫は冷たい色のイメージであるため陰性と考えます。ただし、色だけで判断ができるわけではありません。例えば、トマトは赤いので陽性のような感じがしますが、実際は陰性です。理由としては、中身は緑色であり、酸味も強いことなどから陰性と判断できます。色について陽性の強い順に並べていくと「赤>橙>黄>緑>青>藍>紫」となります。

◎求心力と遠心力による陰陽

求心力とは内側(下降)に向かっていく力で、遠心力とは外側(上昇)に向かっていく力です。求心力は引き締める力であるので陽性と考え、遠心力はその反対であるので陰性と考えます。求心力と遠心力で考えてみると、地中に伸びている野菜(根菜)は地球の内側に向かっているので陽性となり、地表から出ている野菜(葉物)は地球の外側に向かっているので陰性と考えることが出来ます。

◎食材による陰陽

動物は動いているため陽性と考え、植物は静止しているため陰性と考えます。これは動物性の食品にも該当するので肉類は陽性、植物である野菜類は陰性ということになります。

陰陽と食養生

陰陽に分けられた食材を自分の体調に合わせて摂取していくことで体のバランスを取ることができます。例えば、体が熱を持っているような場合は陰性の食材を選び、体が冷えているような場合は陽性の食材を選びます。また、体調だけではなく季節によっても摂取した方が良いものは変わってきます。暑い夏には陰性のものを摂取して、体を冷やし、寒い冬には陽性のものを摂取して、体を温めるものを摂るなど、四季に合わせて食材を選ぶことが大切になります。

味によって陰陽を分ける記載をしましたが、必ずしも一致しないような場合があります。苦い味は陽性であると述べましたが、苦いものでも体を冷やしてしまうものもあります。例えば、コーヒーやお茶、ビールなどは体を冷やす食品となります。コーヒーやお茶を常飲しているような方は、温めて飲むことで冷たいまま飲むよりは陽性に傾きます。また、夏のビールは格別に美味しいですが、つまみに塩辛いものを一緒に食べることで陰陽のバランスを取ることができます。日本酒や焼酎も冷たいまま飲むよりは温めて飲むことで陽性に傾きます。

まとめ

自分の体調や季節によって食材を選んで行くことで健康を維持することは可能ですが、いくら体に良いものでも、過剰に摂取すればそれは毒ともなりかねません。適切な食材を適切な量で摂取することが大切です。また、食べたいものや飲みたいものを一切取らずに我慢しつづけることは精神的なストレスを抱えてしまうので、自分の中である程度の線引きをすることでストレスをコントロールしましょう。

陰陽の判定は色や味など1つの条件だけで決まるものではありません。色々な条件に当てはめていった結果として陰陽が決まります。また、陰陽だけで食材を選択することが全てではありませんが、食養生の1つの方法として参考になれば幸いです。

 


【参考文献】
阪口珠未(2013)『毎日使える薬膳&漢方の食材辞典』ナツメ社.
薬日本堂監修(2010)『毎日役立つ からだにやさしい 薬膳・漢方の食材帳』薬日本堂.
大森一慧(2008)『からだの自然治癒力をひきだす食事と手当て-新訂版』サンマーク出版.
平馬直樹・兵頭明・路京華・劉公望監修(1995)『中医学の基礎』東洋学術出版社.