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中医学における6つの体質


バランスが崩れることで起こる変化


中医学には「気」「血」「津液(=水)」と呼ばれる人体を構成する成分やエネルギーがありますが、この3つが充実して体の中をスムーズに流れていれば健康を保っていられます。しかし、何らかの理由でこれらのバランスが崩れると体調の変化が現れてきます。

バランスが崩れるパターンとしては「不足している」または「停滞している」ことが考えられます。この気、血、津液が不足または停滞している組み合わせを考えると次の6つの体質(気虚、血虚、陰虚、気滞、瘀血、痰湿)に分けることができます。

体質別の特徴とおすすめの食材、五性、五味についてご紹介します。


気虚(キキョ)


気が不足するタイプです。エネルギー不足、免疫力の低下が起こりやすくなります。

気はエネルギーの源であるため、気が不足すると疲労や倦怠感、体の冷えを感じやすくなります。また、気は免疫力や自然治癒力の元でもあるため、気虚になると免疫力が低下し風邪を引きやすく、治りにくくなることもあります。規則正しい生活をし、睡眠時間を十分に取るようにしましょう。睡眠をしっかり取ることで不足した気を補うことができます。冷えがある人は普段から冷たいものを避け、野菜なども出来るだけ火を通して食べるようにしましょう。

このタイプの人は胃腸も弱っていることがあり、食が細かったり、胃もたれや軟便になったりするこもあります。胃腸が弱っている時は胃腸の負担を減らすように心掛けてください。例えば、甘いものや脂もの、辛いものなどは控えるようにし、食事の際はよく噛んで食べるなどして食べ過ぎないようにしましょう。

<気虚の特徴
・疲れやすい
・風邪を引きやすい
・息切れをしやすい
・冷え性
・胃がもたれやすい
・食が細い

<気虚におすすめの食材>
・豆類
・山芋類
・ねぎ
・栗
・牛肉

<気虚におすすめの五性・五味>
・平性、温性、熱性
・甘味、辛味

 


血虚(ケッキョ)


血が不足するタイプです。顔色が悪く、めまいや立ちくらみなどが起こりやすくなります。イメージで言えば「幅広い貧血」みたいなものです。どうして幅広いかと言うと、貧血になっていなくとも、血虚になっている場合があるからです。

血が不足すると赤みが無くなるので顔色が白くなったり、肌が乾燥して艶がなくなったり、目が疲れやすくなったりします。また、貧血の症状であるめまいやたちくらみなども起こります。女性では生理不順や不妊症にも影響することがあります。

睡眠時間をしっかり確保する、食事はしっかり三食摂るなど、規則正しい生活をしましょう。気と血はお互いに繋がっているので、睡眠をしっかり取ることで不足した気を補い、食事から不足した血を補うことが重要になってきます。

<血虚の特徴
・顔色が白い
・めまいや立ち眩みがある
・手足がしびれる
・肌が乾燥し、艶がない
・疲れ目、かすみ目がある
・抜け毛が多く、白髪が多い

<血虚におすすめの食材>
・人参
・黒ごま
・いちご
・牛レバー
・地鶏

<血虚におすすめの五性・五味>
・平性、温性
・甘味、酸味

 


陰虚(インキョ)


津液が不足するタイプです。潤いが足りず、肌の乾燥や便秘などが起こりやすくなります。

津液は中医学で考える「陰陽」で分類すると「陰」に属するため、津液が不足するということは陰が不足する(陰虚)ということになります。体内の陰陽バランスが陽に傾き、また津液は熱を冷ます働きがあるので、津液が不足すると余計な熱が生じやすくなります。

津液が不足すると、更年期障害で見られる症状、のぼせやほてり、寝汗、耳鳴り、生理不順などが起こりやすくなります。また、水分が不足するので喉が渇いたり、目が乾燥したり、便秘なども起こりやすくなります。喉が渇くと、どうしても冷たいものが飲みたくなりますが、冷たいものは胃腸の働きを弱めるので、出来るだけ控えめにしましょう。陰虚は夜型生活の人に多く、夜更かしをすることで陰が消耗されると考えます。なるべく早く寝る習慣をつけましょう。

<陰虚の特徴
・のぼせ、ほてりがある
・寝汗をよくかく
・喉が渇きやすい
・冷たいものが欲しくなる
・目が渇きやすい
・耳鳴りがする

<陰虚におすすめの食材>
・とまと
・蓮根
・梨
・豆乳
・豚肉

<陰虚におすすめの五性・五味>
・平性、涼性
・甘味、酸味

 


気滞(キタイ)


気の流れが滞るタイプです。気の流れが滞ることで、精神的に不安定になることがあります。イメージで言えば「自律神経の失調」みたいなものです。自律神経とは、自分の意志とは無関係に働く神経です。心や体を緊張、または興奮させる「交感神経」とリラックスさせる「副交感神経」とに分かれています。

気の巡りを調整する肝はストレスを受けやすく、過労や緊張が続くと肝の働きが乱れ気滞となります。気が乱れ、精神が不安定になるとイライラして怒りっぽくなったり、憂うつになったり、不安で落ち込みやすくなったりします。それに伴い不眠や生理不順が起こりやすくなります。また、肝とつながる体の部位に痛みが生じることがあります。例えば、体の両側の痛みや張り、こめかみの痛み、舌の両側の痛みなどに痛みが起こることがあります。

自律神経のバランスを整えるためには生活習慣の改善が必要です。例えば、リラックスするために音楽を聴いたり、のんびりする時間を作るなどをしてみましょう。また、適度な運動をしてストレスを発散させたり、気の流れを巡らすような食材を取ることも必要です。

<気滞の特徴
・不安や憂うつがある
・イライラして怒りっぽい
・生理不順になる
・偏頭痛がある
・両脇の痛みや張りがある
・舌の両側の痛みがある

<気滞におすすめの食材>
・春菊
・せろり
・あさり、しじみ
・みかん
・イカ

<気滞におすすめの五性・五味>
・平性、涼性
・鹹味、酸味

 


瘀血(オケツ)


血の流れが滞るタイプです。血行不良になることで、手足の冷えや慢性的な痛みが起こりやすくなります。

血の流れが悪いので、皮膚や手足など体の末端に血が運ばれず栄養も行き届かない状態になり、老廃物が体に溜まりやすい状態にもなっています。栄養不足と老廃物の蓄積によって、顔や唇の色、皮膚の色が暗い、そばかす、便が黒っぽいなどが起こり、血行不良によって肩こりや頭痛、関節痛、生理痛などの痛みが起こりやすくなります。瘀血は色々な病気のもとになるので、瘀血の状態が続くと脳梗塞や心筋梗塞、がんなどが起こりやすくなります。

血行を良くするためには、適度な運動やストレッチを続ける、また同じ姿勢をずっと取らないように心がけましょう。また、ゆっくり入浴することで血行も改善されます。血をさらさらにする食材を多くとることも必要です。

<瘀血の特徴
・下肢の静脈瘤が目立つ
・皮膚の毛細血管が浮き出る
・生理痛がひどく、血塊が混じる
・慢性的な関節痛がある
・肩こりや頭痛がある
・顔や唇の色が位
・しみ、そばかすが多い

<瘀血におすすめの食材>
・玉葱
・イワシ
・サンマ
・にんにく
・桃

<瘀血におすすめの五性・五味>
・温性、熱性
・辛味

 


痰湿(タンシツ)


津液が停滞するタイプです。水の流れが滞ることで、むくみや水太りが起こりやすくなります。

津液は流れが滞ると、新陳代謝が悪くなり、余分な水分や脂肪分が体内に溜まることによって濁っていきます。体内に溜まった老廃物が「痰湿」となり、この痰湿が外に出ようとすることで、にきびや吹き出もの、痰などが出てきやすくなります。体内に水分が多くある状態のため、むくみや水太りに体質となります。また、老廃物が多くある状態のため、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病にもなりやすいです。普段から体がだるいなどの倦怠感やめまい、吐き気などの症状も起きりやすくなります。

津液は運動などによって汗をかくことで、体内にある老廃物や水分が体外へ排出されやすくなります。特に暴飲暴食、運動不足、脂ものや甘いものを摂り過ぎると痰湿になりやすいので、そういった生活をしている人は生活習慣を改めなければなりません。

<痰湿の特徴
・体脂肪率が高い
・コレステロール値が高い
・体が重だるい
・むくみやすい
・めまいや吐き気がある
・痰が多い
・頭重感がある

<痰湿におすすめの食材>
・ごぼう
・海藻類
・玄米
・もやし
・はるさめ

<痰湿におすすめの五性・五味>
・平性
・冷えるタイプには温性・熱性
・熱がこもるタイプには涼性・寒性
・甘味、辛味、鹹味

 


まとめ


中医学における6つの体質は、日々の生活によって変化します。それぞれの体質によっ対処法が変わってくるので、その時々で体調を確認しながら体質にあった対処法を実践してみてください。場合によっては1つの体質に特定できない場合もあるので、臨機応変に考え、判断に迷うときや漢方薬によって更に改善させたいときなどは必要に応じて漢方の専門家に相談してみるのも良いかも知れません。

 


【参考文献】
邱紅梅(2015)『わかる中医学入門』第十一版,燎原書店.
平馬直樹・兵頭明・路京華・劉公望監修(1995)『中医学の基礎』東洋学術出版社.
阪口珠未(2013)『毎日使える薬膳&漢方の食材辞典』ナツメ社.