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西洋医学とは異なる中医学


中国の伝統医学


中医学とは中国の伝統医学のことで、現代医学とは異なった視点から物事を考える学問です。伝統医学と聞くと、どこか怪しい感じがする方もいるかと思いますが、独自の生理観や病理観、診断、治療の方法を持つ、ひとつの体系化された医学です。世界で提供されている医療も多岐に渡っており、世界中には多種多様の伝統医学があり、日本においても漢方を中心に鍼灸などの東洋医学が臨床で用いられていることはよく知られています。

現代医学は日々進歩しており、新しい治療方法や薬が次々と開発されております。しかし、解明されていない部分も多く治療方法が確立されていない病気も沢山あります。そのため、現代医学で解決できなかった場合には別の視点から考えていくことで解決できる場合もあります。

中医学には現代医学と同じくらい未知の可能性が秘められています。

中医学では体全体をひとつのものとして捉えています。体内にある様々な器官や臓器は独立したものではなく、互いに繋がっていると考えます。また、人体と自然界は密接に繋がっており、大きく影響を受けていると考えます。これを中医学では整体観と呼び、基本的な考えとしています。

中医学本来の目的は「病気を治すこと」ではなく「病気にならないようにすること」と言われています。そのためには日常の生活がとても大切であり、食事や生活に大きく左右されることになるわけです。食事や生活に注意することを「養生」と呼び、中医学では養生にとても重きを置いています。

養生を行うことを前提にして、症状の改善を図る場合には漢方薬を使用することになります。ただし、漢方薬は使い方を間違えると効果が出ないばかりではなく、症状を悪化させてしまう原因にもなってしまいます。

 


漢方薬は適切に用いることが重要


漢方薬は医薬品であるため、病気を治療する一つの手段でありますが、その人の体質や病態、症状などによって適切に合わせて用いることで初めて効果が現れます。そのため、漢方薬の効能を十分に把握することがとても重要になってきます。漢方薬の効能は薬性、薬味、帰経、昇降浮沈の4つにより決定されます。

◎薬性

薬性とは薬を服用した時に、体の中で起こる反応をもとに、薬の性質を定義したものです。例えば、体が熱を持っていることで何かの症状が起こっている場合には熱を取り除くために「寒」または「涼」の性質を持っている薬を用いることで、体にある熱を取り除くことが出来ます。熱を取り除く性質が強いものを寒性、それよりも作用が少し劣るものを涼性と定義しています。他にも、温める性質を持つ熱性、それよりも作用が少し劣るものを温性と定義しています。

◎薬味

薬味とは味に関する性質を定義したものです。薬には色々な味があり、その味によって6つに分類されています。辛味、酸味、甘味、苦味、鹹味(かんみ;塩辛い味)、淡味(たんみ;あっさりとした味)の6つに分けられます。同じ味を持つ薬は類似の効能を持つことが知られており、本来の味の違いだけではなく、効能に関しても考えられるようになりました。味に関してのイメージをお持ちの方もいるでしょう。例えば、辛い味の「辛味」は温める性質を持ち、甘い味の「甘味」は和らげる性質を持っています。

◎帰経

帰経(きけい)とは薬が体の中に入った後に、体内のどの部分の病変に作用するかを示すものです。例えば、咳の症状がある時にその原因が肺にあると考えた場合は帰経が肺にある薬を選びます。また、食欲不振などの症状がある時にその原因が脾にあると考えた場合は帰経が脾にある薬を選ぶことになります。

◎昇降浮沈

昇降浮沈とは薬が体内に入るとどういう方向性を持つかという性質を示すものです。薬が上昇する性質のものは「昇」、下降する性質のものは「降」、内側から外側に向かう性質のものは「浮」、外側から内側に向かう性質のものは「沈」となっています。先ほどの薬性や薬味とも繋がっているのですが、昇と浮の薬は「熱」「温」の薬性、「辛」「甘」「淡」の薬味を持つものが多くなります。一方、降と沈の薬は「寒」「涼」の薬性、「酸」「苦」「鹹」の薬味を持つものが多くなります。例えば、下痢の様に下に降りる病態に対する場合には「昇」「浮」の薬を用いることがあります。

◎効能の具体例

ここまでの薬の効能を具体的な生薬で例を挙げてみます。例えば、日本では香辛料として使用されている生姜ですが、生薬名は「ショウキョウ」と呼ばれ漢方薬に使用されています。この生姜の薬性は「温」薬味は「辛」帰経は「肺」「脾」「胃」となっています。薬効例としては「冷えにより胃腸の機能が弱った場合、温めることで症状を和らげ、胃腸の機能回復を助ける」ように用います。もし、熱を持ちやすい体質である場合に生姜を用いると症状を悪化させてしまう可能性もあります。漢方薬はこのような生薬が複数合わさることにより相乗効果を図ることで、更なる効果を期待します。

 


まとめ


中医学は病気に対する視点や考え方が西洋医学と大きく異なる場合があるので、漢方薬の使用方法にも大きく違いが出てきます。中医学の考えに基づいて漢方薬を使用することで、漢方薬本来の効果を出すことが期待できると言えるでしょう。漢方薬は市販で購入することも可能ですが、服用にあたっては専門家に相談して、その人に合った漢方薬を服用することをお勧めします。

 



【参考文献】
小金井信宏(2009)『中医学ってなんだろう-①人間のしくみ』東洋学術出版社.
邱紅梅(2015)『わかる中医学入門』第十一版,燎原書店.
創医会学術部編(2004)『漢方用語大辞典』第十版,燎原.
戴毅監修(2000)『全訳中医基礎理論』淺野周訳,たにぐち書店.